自転車通学の実態

自転車通学指導に関連する実態

自転車通学指導に関連する実態イメージ

通学指導の実態

ルールやマナーなどの“ソフト面”が中心で、
メンテナンスなどの“ハード面”は今後の課題

自転車の危険運転や整備不良などによる事故が多発していることから、2015年6月には道路交通法が改正され、中学生から対象となる14歳以上の危険運転常習者には罰則が導入されました。登下校を含め生徒が自転車を利用する機会は多く、自転車通学中の中高生が被害者になる事故、また、加害者になる事故について目にする機会が増加しています。

そのため、現在の中高生事故対策として各学校が行っている自転車通学指導では、 「信号無視や通行禁止違反など自転車の“危険な違法行為”により、事故の加害者にも被害者にもなりうることを理解させる指導」を中心に行っています。

こうした自転車通学指導の実施内容を見ると、「車道が原則」「左側通行」などのルールやマナーといった、自転車の“ソフト面”の対策が多いようです。
一方、自転車自体の安全基準、メンテナンスについての指導などの“ハード面”の指導については十分な実施が見られなく、今後の課題といえます。

また、学校の教員の悩みについても、「生徒同士の並進」などのルール・マナー違反、つまり“ソフト面”への意識が高い傾向が見られます。

自転車の安全利用促進委員会が自転車通学指導の内容について調査したところ、事故対策のためのルールやマナーといった、自転車の“ソフト面”の指導は充実しているものの、自転車自体の安全基準についての指導や、メンテナンス指導など“ハード面”については今後取り組むべき項目だと実感している教員が多いようです。

(グラフ1)生徒にどのような指導をしているか

出典:全国の中学高校教職者向けアンケート(自転車の安全利用促進委員会 2016年12月)

以下で、自転車の“ソフト面(ルール・マナー)”、“ハード面(自転車自体の安全性)”に分けて、教員の意識・取り組み、中高生の実態などの調査結果をさらに見ていきます。

通学指導(ソフト面)

まず、ルールやマナーといった、自転車の“ソフト面”への教員の意識はどうでしょうか。
生徒の自転車通学時の課題について、「ルール・マナー違反(信号無視など)」とともに、「生徒同士の並進」に危機感や悩みを持っている教員が多いことが見えてきます。

(グラフ2)生徒の自転車通学に対して気になること

出典:全国の中学高校教職者向けアンケート (自転車の安全利用促進委員会 2016年12月)

通学指導(ハード面)

メンテナンス指導などの“ハード面”への取り組みは
まだまだ少ないのが現状

次に、自転車自体の安全基準についてやメンテナンス指導といった、自転車の“ハード面(自転車自体の安全性)”の指導についてです。

高校生が学校で受けている自転車指導についての調査では、交通ルールや運転マナーの指導実施が大半で、「自転車事故を起こさないための定期的なメンテナンス指導」は、実施が2割に満たず、浸透に至っては1割にも達していない状況です。
さらに、「自転車自体の安全性を担保するBAA マーク貼付自転車の推奨」や、「事故時に身を守るためのヘルメット着用」などの“ハード面”の指導に取り組んでいる学校を見ても、わずか5%~6%程度に過ぎず、自転車自体の安全に欠かせない日ごろのメンテナンス全般に関心を向けさせる指導がまだ十分にできていない状況がうかがえます。
事故の大小に関わらず、自身が被害者・加害者どちらの場合にも冷静に対処することができるようにするには、メンテナンスなどの“ハード面”も含めた、あらゆる場面を想定した自転車指導が必要なのではないでしょうか。

(グラフ3)学校での指導(実施しているもの/浸透しているもの)

出典:高校生の自転車利用についての実態調査(自転車の安全利用促進委員会 2016年12月)

高校生の半数以上がメンテナンス0回の現実

それでは、実際に普段から自転車を利用する高校生自身のメンテナンスの意識・現状はどうでしょうか。
自転車のメンテナンスの頻度についての調査では、半数以上がメンテンスを「していない」と回答し、いつ事故が起きてもおかしくない状態にあることが見えてきます。また、メンテナンスについて感じていることについては。7割が「メンテナンスの頻度が分からない」と回答しており、多くの高校生がメンテンスの仕方や重要性を意識できていないことがあらわれています。
ハード面(自転車自体の安全性)へも日ごろから意識を向けることが、相手だけでなく自分の命を守ることにつながっているという認識を広げていくことが課題だといえます。

(グラフ4)自転車をメンテナンスしていますか?(グラフ5)メンテナンスの頻度を把握していますか?

出典(グラフ4,5):高校生の自転車利用についての実態調査(自転車の安全利用促進委員会 2016年12月)