自転車の社会問題
最近の自転車事故の傾向
被害者の重度障害で莫大な賠償金請求も
通常、自転車は車体が軽量であり、多くの場合はそれほどスピードが出ていないため、人身事故を起こしても重傷となるケースはそう多くはありません。とはいえ転倒して骨折などは多いケースですし、転倒して頭を打ったりすれば、死亡や重篤な障害が残ることもあります。被害者に重度の後遺症が残る場合には、賠償が高額となる場合もあります。
被害者に重度後遺障害が残った自転車事故事案の最近の裁判例
CASE 1
被害自転車が歩道を走行中、進行方向から来る加害自転車と接触して車道に転倒し、バイクとも衝突。
被害者 | 52歳女性 |
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後遺障害 | 脳外傷による後遺障害3級 |
損害額 | 7908万円余 |
認容額※ | 7117万円余 |
※過失相殺
CASE 2
歩行者と自転車との事故。歩道上の歩行者に自転車が後方から衝突。
被害者 | 77歳女性 |
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後遺障害 | 脳挫傷等の要介護状態、 後遺障害2級 |
損害額 | 6223万円余 |
認容額 | 4413万円余 |
CASE 3
被害者が自転車で交差点を通過したところで、道路を横断しようとした高校生の自転車と衝突。
被害者 | 24歳男性会社員 |
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後遺障害 | 後遺障害1級 |
損害額 | 1億7244万円余 |
認容額 | 8900万円余 |
CASE 4
11歳の少年が帰宅途中、マウンテンバイクで坂を下っていたが、散歩していた女性に気づかず正面衝突。
被害者 | 62歳女性 |
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後遺障害 | 寝たきり |
損害額 | 9500万円余 |
出典: CASE1~東京地判H24.6.20 CASE2~大阪地判H23.7.26
CASE3~東京地判H20.6.5 CASE4~神戸地判H25.7.4
歩きスマホ条例の自転車版も制定か
スマートフォンの普及により、歩行中にもスマホの画面を見ながら歩く「歩きスマホ」で、対向者と衝突したり、駅のホームから落ちたりする事故が相次ぎ、問題となっています。携帯電話を操作しながら無灯火で自転車走行中、前方を歩いていた女性と衝突、女性に重篤な障害が残ったということで、約5000万円の賠償が命じられたケースもあります。
そもそも、運転中の携帯電話の使用は自動車だけでなく、自転車に乗る際も、2008年の道路交通法改正で禁止されています。2012年4月以降は、多くの都道府県の条例で罰則規定を設ける傾向にあり、例えば、愛知県では自転車乗用中に携帯を使用すると5万円以下の罰金が科せられます。